22 無名さん
「貴方、誰?」

セツは尋ねた。それは少し掠れた、みすぼらしい声だった。けれど彼は不愉快そうな顔はせず、むしろ楽しげに口角をあげた。目線を合わせるように膝を折り、セツの首を人差し指で撫でた。ぞくりとした感覚が体中を駆け巡り、セツは目を見開いた。彼はまた笑う。

「お前、鳴かせたら良い声出しそうね」

「気に入たよ」その言葉の意味を理解する前に、彼は彼女の首を掴んだ。そしてその手に力を込めた。喉が閉まり、急な息苦しさに驚いた。視界が霞み、生理的な涙が目頭に浮かんだ。けれどセツは、彼を止めようとはしなかった。足掻くための両手はだらりと下がったままで、動こうとはしない。

「死にたい人間か? なら、簡単には殺さないね」

彼が手を離した瞬間、ぐらりと体が傾いた。その体を、彼はその腕で受け止めた。

「ワタシの家に来るといいね。痛みしかない最高の時間を、お前にやるよ」

そう囁いて、彼はセツの頭を撫でた。人に頭を撫でられたのは初めてで、セツはその心地よさに目を瞑った。それに彼はまた小さく笑った。


出ましたよキャラの「気に入った」発言ww