23 無名さん
あれはいつのことだったか。
だいぶ前の話すぎて、覚えていない。
というよりも、思い出したくないだけなのかもしれない。
彼のあの姿を見た瞬間から、わたしは、陸の上の彼を、信じることをあきらめたのだから。

「あっ…、んっ、ふぁっ…、ロー…っ」
中をぐちゃぐちゃにかき混ぜられて、頭がおかしくなりそうだった。
「待っ…、もっと…、ゆっく…、んぁっ…!」
少しは手加減して欲しいという願いは、あっさり却下され、ローは、とっくに知りつくしたわたしのいいトコロを、彼のものでがつがつと刺激してくる。
「ああっ! はん…っ、ふっ…! あ、あ、あっ…! あああー…!!!」
その上、彼の指が首の裏をそっと撫でたので、わたしは一気に達してしまった。
全身に力が入り、わたしのアソコが彼の大事なモノを締め付ける。
「くぅ…っ…!」
彼の達する瞬間の表情が、とても好きだ。
目を閉じて切なげに息を吐き、肩で大きく息をする。
きっと、わたしが彼を幸せに出来るのは、この瞬間だけだ。
本当は、彼の汗に濡れた背中を、思いきり抱きしめたいのに。
どうしてもそれが出来なくて。
わたしは、彼に背中を向ける。
「……もっとゆっくりって言ったのに」
「………」
愛の言葉の代わりに、不満を口にすれば、背中越しに、彼がため息をついた。
ギシリとベッドが軋む音がしたから、シャワーを浴びに行くのかと思ったら、男の人にしては細い腕が伸びて来て、後ろからわたしの体を包み込む。
首筋に、彼の熱い吐息がかかる。
こんな時は、少しだけ、彼から愛情を貰った気がして、うれしくて涙がこぼれそうになるのだけれど、これもつかの間のものなのだと思い直す。
「……島に着くの、明日だっけ?」
「………ああ…」
「……楽しんで来てね?」
振り返って、笑顔でそう言えば。
「…きゃっ…!」
体を無理やり仰向けにされる。
ギシッ…。
わたしの両手を拘束して、じっと見下ろす彼。
「……ロー…?」
何も写していないような、冷めた瞳。
「…どうし―――いっ」
声をかけると、首筋を強く吸い上げられる。
「ロー待って、―――痛っ」
ローは、キスを落とす箇所すべてに痕を残しながら、わたしをめちゃくちゃに抱いた。