27 無名さん
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>>27の続き
上陸してから四日間。
わたしは、島の観光を楽しんだ。
さすがにひとりじゃ寂しいから、専用のガイドをつけて。
この人が、まあ、大層面白いおねいさんで、道中たくさん笑かしてもらった。
遊園地とか、テーマパークとか、きれいなサンゴ礁のある場所とか、七色に光る洞くつとか。
いろんな場所に連れて行ってもらった。
中には「恋人岬」なんて場所があった。
何でも、大昔に、王子様と花売りの少女が身分の差を乗り越えて、愛を誓い合った場所だそうだ。
岬の先にある鐘をひとりで鳴らすと、近いうちに恋人が出来て、恋人と一緒に鳴らすと、将来二人が結ばれる、なんて言い伝えがあるらしかった。
けれど、船の中限定になりつつあるとは言え恋人は一応いるし、かと言って、将来を誓い合うような間柄でもないので、つつしんで辞退しておいた。
また島に寄ることがあったら、今度こそ一周しましょうね〜、と笑顔で手を振るおねいさんにうなずいて、船に戻る。
黄色い塗装に、ニタリと笑うジョリーロジャーを見ると、すこしほっとするわたしは、やっぱり、この船が好きなんだと改めて思った。
梯子を下ろしてもらって、甲板に上がり、部屋へ向かう。
いつものツナギに着替える前に、シャワーを浴びてすっきりしようと、クローゼットから着替えを取り出して部屋を出る。
向かう先は、船長室。
わたしは、この船で唯一の女船員なので、乗船した時から、お風呂は船長室のものを使わせていただいている。
コンコン。
今は不在の筈だけれど、礼儀として一応ノック。
「失礼しま〜す」
当然返事はなく、わたしは、船長の部屋に入ると、そのままお風呂に向かう。
ぬるま湯設定のシャワーを存分に浴びて、ついでに全身を洗い、お風呂を出た。
「…?」
脱衣所で体を拭いていると、くもり硝子の向こうに、ちらちらと人影が見える。
船長室に出入りできる人間なんて限られているし、せいぜいシャチかペンギンだろう(あの影の形からして、ベポはない)と思い、構わずつなぎを着て脱衣所を出たのだけれど。