28 無名さん
>>28の続き
「……え?」
ドアを開けて視界に入ったのは、意外なことに、この部屋の主だった。
ローは、ロングソファに座り、長い足を優雅に組んで、本を読んでいる。
戻って来てたんだ、めずらしい…。
いや、島に停泊している間は、むしろわたしの方が船に寄りつかないから、ローがどんな行動をしているのかなんて知らないし、別に知る必要もない。
「ロー、お風呂借りましたー」
そう言って、わしわしと頭をタオルで拭いて、部屋を出ようとした。けれど。
「リリア」
名前を呼ばれて、立ち止る。
「何?」
目が合うと、ローの手がぽん、と彼の座っているソファをたたく。
隣に座れ、ということだろう。
「えっと、ごめん。明日早いから、今日はもう寝たいんだけど」
「座れ」
「……」
うわ、強引。
さっきまでずっと遊び倒してたから、疲れてるんだけど。
軽く抗議の目を向けてはみたものの、にらまれながら、「…聞こえなかったか?」なんて言われたら、もうどうしようもない。
だって、ハート海賊団の中では、ローが法律なのだ。
ローの隣に座ると、頭の上に被せておいたタオルを奪われ、ぽふぽふと髪を撫でるように水分を取ってくれる。
「………」
いや、ありがたいけれども。
せっかくの島なのに、こんなところで何をしてるんだ、この人は。
出航してしまえば、女はわたし一人しかいないんだから、島にいる時くらい、他の子と遊べばいいのに。
……なんてことを考えるわたしは、果たして本当にローが好きなんだろうか。
いや、確かに好きだったよ? 両想いになった時は。
背中を見てるだけでうれしいし、目が合ったらもっとうれしいし、手をつなぐだけでどきどきしてたし。
でも、恋人になって一番最初に着いた島で、他の女と遊ぶ姿を目撃した日には…、どうしようもなくない?
数回抱いて、もう飽きたのかなと思ってたんだけど、航海が始まると、けっこうな頻度でローの部屋に呼ばれる(もしくは部屋に乱入される)。