29 無名さん
>>26
>>27
>>28の続き
だから、たぶんローは、単に、航海中に欲を吐き出せる女を、確保しておきたかっただけなんだと思っていた。
なのに。え、ちょっと待って。
何なの? この、ジッパーを下ろす手は。
首筋に落ちて来るキスは。
タンクトップの隙間から差し込まれる手は。
ソファに押し倒されて、ローの体重が体にかかって、ローのしたいことが確定したので、慌てて彼の胸を押す。
「ちょっと、ほんと待って、ロー。明日早いから…」
「安心しろ。お前は人数に入ってねェ」
「…は?」
何だそれ。まったく意味がわからない。
困惑しているわたしなんて気にも留めずに、胸を押していた手をあっさり振り払って、ローはことを進めようとする。
え? せっかく島にいるのに、何でわたし?
やだやだやだ。島にいる時は、わたしに関わらないで。
他の女の子を品定めした、その目にわたしを映さないで。
他の女に触れた手で、わたしにさわらないで。
「やだ…! やめてロー!」
力を振り絞って暴れても、ローに抑え込まれた体はびくともしない。
それでも、わたしの体をまさぐる手の動きは止まったので、ほっと息をつく。
「…泣くほど嫌か」
ローの指が、まなじりにふれて、わたしは初めて自分が泣いていると気づいた。
「そんなに嫌なのか。島でおれに抱かれるのが。島でおれと一緒に過ごすのが」
淡々と言ってはいるけれど、どこか苦しそうなローに、息を飲む。
「……ハァ…」
ローは、ため息をついて上半身を起こし、わたしに背を向けてソファに座った。
わたしも、体を起こはしたけれど、乱れた衣服を正すことは忘れて、ローに言う。
「待ってよ。島で好きに過ごしたいのは、ローの方でしょ?」
「……は?」
「島では、わたしのことなんか気にしないで、女の子と好きに遊びたいんでしょ?」
「……どういう意味だ」
ローが振り向いて、驚いた顔でわたしを見た。
ああそうか。ローは、わたしが知っていることに気づいていないんだ。
「はぁ…」
何か……、もういいや。
もう、疲れた。