32 無名さん
(轟焦凍の場合)
今日、家の離れに引っ越してきたやつがいる。俺と同い年の子供、つまり中学三年という大事な時期に差し掛かっている子供だ。
そいつは、女であるらしい。……『らしい』、というのも、俺は直接会ってねぇからそう言う他に言葉が選べねぇ。そう、そいつの事は人づてに聞いただけだ。それもこれも、この家で暮らす俺以外の他の家族と『新しい同居人』が引き合わせられている時、俺は一人で個性を操る為の鍛錬をしていたからだった。前もって連絡だとか言伝だとかあれば、俺だってきちんと時間を空けていた筈だった……なのに、親父の奴は何一つ俺には知らせなかった。唐突も唐突過ぎる決定だ。だから、挨拶も疎かになっちまった。
「後で焦凍も、離れの部屋に会いに行ってみたら? 控え目な子よ」
一緒に暮らす姉がにこやかに提案してくれはしたが、鍛錬で草臥れていた俺は風呂に入ってまっすぐ寝床に向かっちまった。学校の課題も夕の食事すらも、そこそこに。
言い訳しておくと、決してそいつのことを完全に忘れていたわけじゃねえ。ほんの少しだけ、疲労感と眠気に負けてしまっただけだ。
寝床じゃあっという間に眠りに落ちちまったから、朝起きて身支度を済ませて食事室に向かった俺は、そこで改めてそいつのことを思い出して――やっと出会った。この家に増えた、新しい住人と。
轟くんくどすぎ!
今日、家の離れに引っ越してきたやつがいる。俺と同い年の子供、つまり中学三年という大事な時期に差し掛かっている子供だ。
そいつは、女であるらしい。……『らしい』、というのも、俺は直接会ってねぇからそう言う他に言葉が選べねぇ。そう、そいつの事は人づてに聞いただけだ。それもこれも、この家で暮らす俺以外の他の家族と『新しい同居人』が引き合わせられている時、俺は一人で個性を操る為の鍛錬をしていたからだった。前もって連絡だとか言伝だとかあれば、俺だってきちんと時間を空けていた筈だった……なのに、親父の奴は何一つ俺には知らせなかった。唐突も唐突過ぎる決定だ。だから、挨拶も疎かになっちまった。
「後で焦凍も、離れの部屋に会いに行ってみたら? 控え目な子よ」
一緒に暮らす姉がにこやかに提案してくれはしたが、鍛錬で草臥れていた俺は風呂に入ってまっすぐ寝床に向かっちまった。学校の課題も夕の食事すらも、そこそこに。
言い訳しておくと、決してそいつのことを完全に忘れていたわけじゃねえ。ほんの少しだけ、疲労感と眠気に負けてしまっただけだ。
寝床じゃあっという間に眠りに落ちちまったから、朝起きて身支度を済ませて食事室に向かった俺は、そこで改めてそいつのことを思い出して――やっと出会った。この家に増えた、新しい住人と。
轟くんくどすぎ!