49 無名さん
──自転車に轢かれて死んでから、私はファンタジーの世界の魔女の娘として転生した。
魔女の里では結構平和に暮らしてたんだけど、10歳になったある日魔女狩りに住居を焼かれてみんな散り散りに逃げていった。殺された魔女もいた。ジェノスの焼却砲で思い出したのは燃え盛る炎の記憶があったからだと思う。
逃げた先で私は剣豪に拾われて剣を習い、魔本で必死に勉強した。
常にバリアを張れたり、脚が速いのは、生きるために重要だと考えて特に力を入れて特訓したから。身体能力が高いのは、鍛えればその分強くなれる世界だというのも理由の一つ。
サイタマのことを知っていたのは、元々居た世界でサイタマが物語の登場人物だから。
なぜこの世界に来たのかは分からない。けれど、前の世界を出た理由は覚えている。

「剣豪の先生が老衰で亡くなって、特に未練がなかったから異世界転移の大魔法を使うことにしたの。ほとんどの魔力を消耗したから、下手に魔法を使わないように記憶を消す防御反応が起こったんだと思う」
「…へえ。じゃあ、あの部屋や免許証はどういうことなんだ?」
「元々居た世界の記憶を頼りに色々生成して再現したものが、空いてる座標に転移したの。着ていた服も、持っていた免許証や油性ペンも、サイン書いてくれた鏡も。お菓子やルイボスティーも、全部魔法で生成した。元いた世界にすごく未練あったんだよね。…免許証の住所が変わったのは、異世界転移魔法の効果だよ。この世界に存在していたことにするために必要な改変なんだ」
「先程バリアが使えるようになったということは、魔力が回復したからでしょうか?」
「そうだよ。今なら全力出せる。頭痛も治ったしね」
「おお…魔法見せてくれよ」
「俺との手合わせで、見せてくれませんか…?」
「うん、もちろん!」

そこまで考えてるならなろう行けばいいのに