6 無名さん
ひとりぐらし?ふたりぐらし?(シーザー)

「ただいまぁ」
「おかえり、由愛」

わたしは、いま、幽霊と同棲してる。
なまえはシーザー。
ずっとむかし、亡くなったらしい。

「きょうもかわいいよ、セリョリータ」

いつも、うれしいことばをくれるシーザー。

「ありがと」
「きみにふれられたらいいのに。」

そう言って、ちょっとかなしそうなかおでわたしのあたまに手をおく。
するんと、すけるシーザーの手。

「由愛」
「シーザー」

「由愛」
「なぁに。」

かなしそうにあたしを呼ぶの、ときどにある。
生きてるあたしと、しんでるシーザーのあいだの、どうしようもないかべをかんじてるみたい。

「どうしてぼくは生まれかわらないのかな。」
「・・・」
「生まれかわれてたら、由愛とまともに出会えて、ふれられてたかもしれないのに。」
「・・・」
「由愛にふれたい。」

幽霊のカレと、生きてるあたし。
すきなのに、ふれあえないあたしたち。