62 無名さん
私を抱いた男は必ず私を優しく突き放す。
私は幼い頃は無個性だと教えられて生きてきた。関節はみんなと同じはずなのに、私には何も出来なかった。
別に、それでも良かった。優れた個性がなくても優れた人間になればいいと考えられる環境にいたから。お母さんは私に「愛されるような人間になるのよ」と優しく告げた。
勉強をしてお洒落をして、私はお母さんの望んだ愛されるような人間になった。つもりだった。
「初めてsexをした男、私に何て言ったと思う?」
「さあ」
「犯してごめんなさい。……笑えるよね、その後付き合ってきた男もみんなそれ」
しかし私を性的対象として見なくなったわりには男たちは今でも私を愛し、守ろうとしている。
そのことを安いバーで隣になった男にぶちまけると、その男は無言で酒を傾けた。つまらない反応を返されるよりもよっぽどいい。私は気にせず話し続けた。
「まるであいつらの母親にでもなったみたい。私は一生女として愛されないんだ」
「じゃあ俺とヤるかいお嬢さん」
「いいよ、今最高に気分悪いの」
気軽に約束をすると、男は死柄木と名乗った。
近くのラブホテルへ入ると、死柄木さんは「マジでヤるの? 育ちが良さそうだけど頭ん中は違うんだな」と随分なご感想を漏らした。生憎と私の個性は戦闘向きではないけれど、この個性は、使い方によっては、最も恐ろしいものとなるだろうことも、何となく感じていた。
「まあいいや、ホテル代もお前持ちな」
了解も反対もせずに私は服を脱ぎ捨てた。むしゃくしゃすると言葉なんてどうでもよくなるから不思議ね。拳と愛さえあればどうにでもなる気がする。
私は幼い頃は無個性だと教えられて生きてきた。関節はみんなと同じはずなのに、私には何も出来なかった。
別に、それでも良かった。優れた個性がなくても優れた人間になればいいと考えられる環境にいたから。お母さんは私に「愛されるような人間になるのよ」と優しく告げた。
勉強をしてお洒落をして、私はお母さんの望んだ愛されるような人間になった。つもりだった。
「初めてsexをした男、私に何て言ったと思う?」
「さあ」
「犯してごめんなさい。……笑えるよね、その後付き合ってきた男もみんなそれ」
しかし私を性的対象として見なくなったわりには男たちは今でも私を愛し、守ろうとしている。
そのことを安いバーで隣になった男にぶちまけると、その男は無言で酒を傾けた。つまらない反応を返されるよりもよっぽどいい。私は気にせず話し続けた。
「まるであいつらの母親にでもなったみたい。私は一生女として愛されないんだ」
「じゃあ俺とヤるかいお嬢さん」
「いいよ、今最高に気分悪いの」
気軽に約束をすると、男は死柄木と名乗った。
近くのラブホテルへ入ると、死柄木さんは「マジでヤるの? 育ちが良さそうだけど頭ん中は違うんだな」と随分なご感想を漏らした。生憎と私の個性は戦闘向きではないけれど、この個性は、使い方によっては、最も恐ろしいものとなるだろうことも、何となく感じていた。
「まあいいや、ホテル代もお前持ちな」
了解も反対もせずに私は服を脱ぎ捨てた。むしゃくしゃすると言葉なんてどうでもよくなるから不思議ね。拳と愛さえあればどうにでもなる気がする。