67 無名さん
そこで私ははっと気がつく。私は丘上さんの許可をもらわずに、幸村くんに逆ハーレム補正のことを話した。そのことを謝らなくてはいけない。

「どうしたの?」

突然黙った私に、丘上さんは首を傾げた。彼女の純粋な瞳に私は緊張した。怒られたらどうしよう。呆れられたらどうしよう。嫌われたらどうしよう。でも今言わないと、どんどん言いづらくなってしまう。今言わなくてはと、私は勢いよく頭を下げた。「え?」と丘上さんから驚きの声があがった。

「丘上さん、ごめん!!」
「え? な、何が…?」
「私…幸村くんに逆ハーレムのこと話ちゃった」
「えっ…」

丘上さんは言葉につまった。顔を見なくても、戸惑ってるのがわかった。

「幸村くんにね、逆ハーレム補正が効いてなかったの。だからもしかしたら補正を解くヒントを持ってるかもしれないって思って…」

丘上さんからは相変わらずなんの返事もない。心臓が煩い。これは先程の白石くんと一緒にいたときとは違う煩さだ。私は怖いと思いながらも、ゆっくりと顔をあげた。丘上さんは元々大きな目をさらに大きく見開いていた。まるでこぼれ落ちそうだと思った。

「ご、ごめん。怒ってるよね…」

じわりと視界が歪む。泣きそうだ。でも泣きたくない。私のせいなのだから。

「ゆ、幸村くん…私のこと気持ち悪いとか言ってなかった…?」

突然の問いに私は「へ?」と間抜けな声をあげてしまった。そして慌てて首を横にふる。

「そ、そんなこと言ってなかったよ。これから協力てくれるって言ってた!」

「そう」と丘上さんは視線を降ろした。その瞳は悲しみに染まっていた。胸が罪悪感で締め付けられる。

「あのね…私は手島さんだから話したの。だからもうあんまり…他の人には話して欲しくない」
「そ、そうだよね! 本当にごめんね!!」
「わかってくれたなら、もういいよ」

柔らかい声がするりと耳に入ってくる。私は恐る恐る丘上さんの顔を見た。彼女は困ったように笑っていた。その表情から怒るのに慣れてないんだなと思った。

「これからも仲良くしてくれる?」

私がそう尋ねると、丘上さんは慌てて首を縦にふった。

「も、もちろんだよ」
「よかったー!」


丘上さんに許可なく独断で幸村に話たんかーいwwww