68 無名さん
隣に立っていた白石くんが思い出したように私をお姫様だっこした。白石くんがあまりにも突然にそんなことをしてきたものだから、私は驚きのあまり変な声を上げた。その変な声につられ、丘上さんと財前くんが振り返った。私の顔は更に赤くなった気がした。恥ずかしすぎる。心臓が壊れそうだ。そんな私の顔を、白石くんは爽やかな笑みで覗き込んだ。

「手島さん、軽すぎやろ」
「ご、ご謙遜を」
「あはは、ほんまやって」
「と、とりあえず降ろして。自分で歩けるから」
「あかん。女の子なんやから、こう言う時は男に甘えとき」

ご謙遜の意味が…