7 無名さん
「…亜門さん、ありがとうございました。私はそろそろ…」

「家はどちらに?」

「電車を乗り継がなければならないので、歩いて帰ります。もう終電は行ってしまったでしょうから…」

「そんな、危ないですよ。またあんな奴らに捕まってしまう。それに喰種の活動時間でもある」

「いいんです、私なんて」

「いいや良くない、今日は泊まっていって下さい。朝になれば不良も喰種もいなくなりますから」

「……ありがとうございます」

とりあえず泊まっていく段取りはついたが、これからどうしよう。ひどくお腹が空いてたはずなのに、いつの間にか消えてしまっている。何も仕掛けずに寝るか、どこまでも哀れな女を演じるか。あまり話すとボロが出てしまいそうだし。

「ベッドを使って下さい、俺は床で寝ますから」

「で、でも…」

「平気です、鍛えてますから」

「何から何まですみません」

「いえ、」