76 無名さん
>>75
「はあ…。ほらリン、さっさと願い事を叶えてもらえ」
あら、サッチさんお疲れモード?
どうやら、死神さんとの会話は、あまり楽しくないらしい。
何だ。じゃあ、悩む必要ないね。ほっ。
気を取り直して、わたしは、死神さんに目を向けて、手の中の実を差し出す。
「実はね、このヤミヤミの実を、しばらくの間あずかって欲しいの」
「あずかる?」
「そう。期間は…、……そうね、この実を使って、白ひげ海賊団を倒そうとする人間が死ぬまで」
「えっ?」
「いいよ〜」
「じゃ、頼んだ」
「頼まれた〜」
サッチさんが驚いている間に、わたしと死神さんは、悪魔の実の譲渡をさっさと終える。
「おいリン、ずいぶん具体的だな、まさか、この実の能力を使って、白ひげ海賊団に挑んで来るヤツがいるってのか?」
う。するどい。
「……、わたしが読んだお話の中では」
「って、今、この世界は、その話通りに進んでるんだろ?」
「………、ほぼ」
ほとんど同じではあるけれど、わたしが存在してるから、まったく話通りではない。
「でも、ヤミヤミの実もなくなるし、白ひげさんの病気も治ったから、きっと大丈夫…、…と思いたいです」
そう言うと、サッチさんの顔が、すこし歪んだ。
「……て事は、本の中では、白ひげ海賊団は壊滅するのか?」
「…!」
ぎゃ! ずばっと核心を突かれちゃったよ!
わたしの言い方も悪かった?
大丈夫と思いたい、とか言っちゃったからな。
「……そうなんだな」
疑問形でなく、完全に肯定したサッチさん。
「…、…」
わたしは、返す言葉が見つからず、ただうつむいた。
「……」
「……」
落ちる沈黙。