81 無名さん
八百万の“個性”は物の構造をしっかり知れば知るほど、高性能な物が出来る。たくさんの物を知れば知るほど、創造の幅は広がる。

八百万はそれを誰よりもわかっていたはずなのに、ハルカの確信的口調に強く圧されていた。絶対的自信と、大きな悪意の前に、心が、思考が、身体が萎縮する。

ハルカが一歩、彼女に近づく度、八百万は一歩、彼女から後退った。

「なんだっけ?下学上達?一意専心?トップヒーローに?笑っちゃうなぁ、“無個性”がトップヒーローに!なんて!!」

笑われた。ずっと追い掛けてきた夢を。
誇りに思っていた“個性”を。今までの努力を。

目の前で唇を卑しく歪めている人間に笑われた。
「無個性!」と言われる度に、心が痛む。「ヒーローになれない!」と言われて、涙が出そうになる。

泣いてはいけない。ヒーローは、泣いてはいけない。素晴らしい、トップヒーローになるのだ。

「何、泣きそうな顔してんの?ヒーロー向いてないんじゃない?」

ドン、と背中が扉に当たる。逃げられない、と認識した瞬間に腰が抜け、八百万はズルズルとその場にへたり込んだ。

「情けないなぁ、辞めちゃえば?ヒーロー。」

いくら後で謝るとはいえこのヤオモモdisは酷すぎる