90 無名さん
ニコリと笑った謙也くん。それは相変わらずの満面の笑みだった。なんて気遣いのできる人なんだろう。丘上さんが惚れるのもわかる。私は謙也くんの人間性に感動したよ。

「謙也くんってカッコイイね!」

そう素直に言えば、謙也くんは目を見開いた。そしてずいっとまた顔を近づけてきた。

「ほんまか!? 白石よりもか!?」
「私は謙也くんのが好き!」
「っ…!?」

これまた素直に受け答えすれば、謙也くんは真っ赤になって言葉に詰まった。それに思わず首を傾げると、額をビタンと叩かれた。容赦がなくて、すごく痛かった。

「あああアホか! そそういうこと簡単に言うもんやないで! 俺、単純やし惚れてまうぞ!」
「えー?」
「たく、…最近の若い者は…」

そうブツブツ言いながら、謙也くんはさりげなく洗濯物の入ったカゴを持ってくれた。やっぱりカッコイイと思う。男前だ。

「(白石くんといるより謙也くんといる方が落ち着く)」


謙也がロバ耳夢主に惚れた瞬間