91 無名さん
「Good morning,my sister!」


すみれの休日は、そんな兄の一声から始まる。


カーテンを開け放たれ、そこから自分に降り注ぐ日光に刺激されたすみれは顔を顰めながら目を覚ました。


「……おはよう、お兄ちゃん。
毎度のことながら、ここは日本であって英語圏の国じゃないからね?
もっと普通に起こそうよ」


「すみれは寝顔も可愛いねぇ。どれだけ眺めてても飽きない。目の保養だったよ」


「お兄ちゃん?言葉のキャッチボールって知ってる?
それと、私の寝顔なんて眺めてないで普通に起こして!ホントにお願いだから!」


困ったように自分を見上げる寝癖のついた妹の髪をグシャグシャとかき混ぜて、椿はにっこりと笑いながら言った。


「すみれが可愛いすぎるのが悪い」


自分の兄ながらうっとりする美貌に、すみれは呆れたように顔を引き攣らせる。


「椿お兄様、このやり取りは一体何回目でしょうか」


「すみれも学習しないねぇ……」


「お兄ちゃんには言われたくないかなっ!」


すみれが投げ付けたクッションを、椿は軽々と受け止めた。


*****


「いやぁ、随分と懐かしいのを引っ張ってきたね」


「こういうのじゃないと私とお兄ちゃんの絡みなんて書けないからでしょ」


「ははっ、違いない。まぁ取り敢えず、」


「「Thank you for clap!」」


「……今回はすみれも同罪、ってね」


「お兄ちゃんにのせられた……!」