90 無名さん
「あ、あ、ある、ある日、おっおっお父さんがい、いい、ました」

「は?」

「わた、わたしをわたしをば、もに、した、お父さんが、あはっあはっ!あははははっ!!!!!!!」

急に意味の解らない事を言い出した生徒が俺の左手を握りその場から俺を投げ飛ばす。
何が何だか解らないまま投げ飛ばされた俺は脳無に指示して受け止めさせるが、正面を向いた時には既に眼前に迫る生徒の足。

「脳無!!」

「まぁまぁまぁ!すごいね!すごいね!ほめてあげなくちゃ!いーこ、い、いーこ!!」

甲高い笑い声を上げならが足を振り抜いた生徒は、最も簡単に脳無の腕を吹き飛ばす。脳無はショック吸収の個性を持ってるんだぞ!?

「…化け物だ、チートだ…ぁあ、欲しいなぁ」

「飛んじゃった、飛んじゃった!シャボン玉はパチンとあなたも、はじけて、きれいだよ」

「弾ける予定はないんだよなぁ」

背中から出ていた羽が生徒に纏わり付いて顔面を、体を隠す。まるで鎧の様だ。
隙間から覗く赤い瞳がきゅっと笑う様に半月に歪んだのと同時に目の前にぱっくりと開かれた口が見える。

「あたま、おいしいんだよ」

咄嗟に屈めば背後にいた脳無にぶつかり、脳無の胸元から血が噴き出す。

「食い破りやがった…」

「うま、んま」

脳無の返り血を拭い、手を舐める奴に背筋がゾッとする。

こいつはヤバい奴だ。

「おかわり、いっぱい」

完全にヴィランですわ