1 無名さん

魔法晒し154

󾀀
冥界につながる電話ボックスがある。 

山奥の斜面に近い国道の道路で、 
車が方向転換するときに必要な余分な土地がある。 

そこに電話ボックスがあるのだが、 
何故こんなところに立てたのかが一層不気味さを漂わせる。 
俺は、仲間数人とその電話ボックスに付いた。 

噂では、自分の死んだ会いたい人を心の中で念じながら、 
10円を入れ、4、3(黄泉)とかけると 
冥界とつながり、その人と話せるらしいのだ。 

仲間内でじゃんけんで負けた俺は、 
早速ボックスの中に入った。 

外で仲間がにやにやしている。 
俺は死んだおじいちゃんを頭に浮かべながら、 
10円を入れ、4,3とボタンを押し、受話器を耳にやった。 

「・・・・・・・・・・・・・」 
数分たってもなにもかからない。 

内心、ほっとしながら、ボックスから出ようとしたら、 
にやにやしていた仲間の姿が見当たらない。 

「ち、あいつら、俺を驚かそうとしてるんだな」 
と思いながら出た。 

ん、なんか不思議な感覚を覚えた。
ボクは今、涼しい棺桶の中にいます。 

さっきパパとママが棺桶から出て行きました。 

でもその棺桶は前後左右がガラスで出来ていて明るいので恐くはありません。 

だんだん喉が乾いてきました。 

お水が欲しい・・・ 

パパとママ・・・はやく帰ってこないかな・・・
「アッ、おかあちゃん、流れ星」 


「今のうちに願い事を言いなさい」 


「一日も早くお父さんに会えますように」 


「そんなことを言うもんじゃありません。」 


「じゃあ・・・お父さんは長生きしますように」
とある病院での夜中の出来事。 
記録室で書き物をしていたらひょっこりと部屋を覗く気配がした。○さん。 

「どうしたの?○さん」 

声を失う手術をした○さん、困ったように立っている。 

「家に電話?何かあった?書類なら今書いてるよ?」 

小指を立てたあと、額に手を当てて頭をゆらゆらさせている。 

小指・・・女・・・女房。・・・・気分悪い。 
いま、○さんに奥さんが付き添ってる事を思い出した。 

「奥さん、気分悪い?見に行った方がいい?」 

○さんがうなずいた。急いで○さんのいる部屋に走る。 
部屋が見えたとき、部屋から息子さんが出てきて「すいませんお袋が!」と叫んだ。 

具合の悪そうな奥さんを息子さんと2人で病棟に移し 
疲れによる貧血だろうということで、点滴をしてしばらく様子を見ることにした。 

しばらくして様子が落ち着いたのを見て、家に帰れるように奥さんと息子さんに 
○さんの診断書を渡した。同時に○さんが奥さんの不調を教えてくれた事も。 

なんだか奥さんは泣いていて、息子さんは泣きそうだった。 

迎えに来た車を見送って、つぶやいた。さよなら、○さん