50 無名さん
>>49
大豚wの食券を買い列に並んでいると後ろの男に
「バトルどうですか?」と声をかけられた。
「いや、結構です」と返すと男は俺にだけ聞こえる声で呟いた。
「そんな事言わずに。アンタ、品川のハリケーンウルフでしょ?」
俺の顔に緊張が走る。確かに俺は2年前まで品川店でファーストをはる百戦練磨のロッター、
通称「ハリケーンウルフ」だった。
だが今は一線を退いてるこの俺に何故?後ろを振り返りその男の顔を一瞥すると男は続けた。
「今のウルフさんの立場は承知しているつもりです。ただ我々はウルフさんに協力して頂きたいだけなのです」
「どういう事だ?」と俺が返すと
「ウルフさんは現在の二郎を取り巻く環境の変化をご存知ですか?
かつて連日繰り広げられた死闘とも呼べるロットバトルはなりを潜め、今ではロットマスターだの麺バーだの馴れ合いばかりです。
その結果、ロット荒らしと呼ばれる無法者を野放しにしている。二郎の秩序を取り戻すにはかつてのバトル至上主義に戻るべきなのです」
「つまり…俺にどうしろと」
「私が勝った場合、我々の派閥に入って頂きます。
革命を起こすにはあなたのようなリーダーが必要なのです」
俺は黙ったまま席に着き食券をカウンターに置く。
数分の沈黙の後、全マシコールを行い俺は呟いた
「いいだろう、かかってこいよ」
店内に張り詰めた一瞬の緊迫。と同時に出された大豚wのブツ。
男は素早いフットワークでまずは野菜から流し込んでいく。成程、この俺にバトルを挑むだけのことはある。
だが所詮は三流。俺は両手に箸を持ち、麺に差し込み捻りを加わる。
―『天井崩し』
麺を一気に掬い上げ麺から攻める俺に対し男は
「悪手だ。麺は腹に貯まる。俺の勝ち」と思ったに違いない。
だがここからが俺の真骨頂。麺と豚を攻略すると、スープを箸で掻き交ぜながら渦をつくり、野菜ごと一気に飲み干した。
「ば、ばかな…」言葉を失う男に俺は言い放った。
「『私が勝った場合』だと…?図に乗るのも大概にしろよ、小僧」
男は顔に動揺を浮かべたまま店を去っていった。
それ以来私にバトルを仕掛けてくるものはいない。