78 無名さん
たゆるり、ゆらり。やわらかで曖昧な意識がうみを浮かべたのは、声が聞こえた気がしたからだった。それが人のもので、音の低さから男性だろうことは辛うじて推測できたけれど、肝心の言葉の姿はつゆほども見えない。彼は何と言っているのだろう。ぼんやりと聞こえるものは音でしかなく、つなぎあわせてひとつの言葉にするにはあまりに不鮮明で、それらを咀嚼し喉の奥へと滑らせることの難しさは、外の世界の音を拾おうとすれば苦労する水中を、深い海を思い起こさせたのだ。

上手いじゃん
私こんなの書けない