1 フェムネコとの出会い

フェムネコとの出会い

そこは昔ながらのゲーセンだった。
たぶん、僕が生まれる前から営業していると思う。老朽化も著しく、リニューアルする気もないのか、未だにストリートファイター2なんかの看板がボロボロのまま飾られたりしている。
10年ぶりに故郷に帰ってきた僕は、懐かしさのあまり足を踏み入れていた。中には人がほとんどおらず、照明は薄暗い。おそらく機種の入れ替えなんかもやっていないのだろう。都会ではまず見られなくなったような、僕が通っていた頃に動いていた筐体がそのまんま残っていたりする。このゲームがブームの頃は、これ目当てで子供たちが列をなしていたっけ、なんて思い出しながら、しばし郷愁に浸っていた。
僕は、まじめな学生ではなかった。このゲーセンにたむろして、100円玉積み上げて脱衣麻雀なんかに精を出していたものだ。店のおばちゃんが「頑張るねえ」と、コーヒー牛乳をおごってくれたりした。当時から結構な年齢だったおばちゃんはまだ生きているのだろうか?
フェムネコとの出会いもこのゲーセンだった。彼女もまた、僕と同じように脱衣麻雀で画面の女の子を脱がすことに命を懸けているような不良学生だった。
ゲーセンで顔見知りになって3か月後、脱衣麻雀の女の子のように彼女を脱がしていたりしたものだ。
ノンケとFTM
当時は同性愛についてはまだまだ理解がなかった。僕も彼女もそのまま付き合い続けるには、振り切ってはいなかった。僕は彼女のことを忘れようとして、逃げるように故郷を出たようなものだ。
あれから10年以上経つ。僕の中の性の目覚めは、僕を完全に男にしていた。
彼女は今何をしているのだろう?ここでゲームをしていれば、また彼女に会えるのではないか?そんな淡い思いもあった。
まだ健在だった脱衣麻雀に僕は思わず100円玉を滑り込ませていた。今ではレトロですらある16ビットの音楽が心地いい。
しばらく、100円玉を消費しながら脱衣麻雀をやっていると、僕の傍らにコトンとコーヒー牛乳の瓶が置かれた。
「頑張るねえ」
見上げると、そこにいたのは、あの頃から変わりがない彼女の姿だった。おばちゃんが亡くなり、この店を引き継いだのだと言う。いつか、またこうして出会える日が来ることを待ち望みつつ。
二度目のフェムネコとの出会いだった。
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